人って幸せになれない！

幸せになれない理由

人が幸せになれないのは、死を知ってしまったから。ってよく聞きます。時間の概念が生まれ、時間の経過とともに誰もが経験しなければならない死。確かにいずれ死んでしまう事を知ってしまった人間は、他の動物より不幸かもしれません。

しかし、そんな難しい事は別にして、最近つくづく人間って幸せになれないんだなぁ〜と思うのです。それは、歳を取るにつれ膨らむ欲です。いろいろな欲が増えてきます。

人間って自分の欲求が満たされた時、幸せを感じる様にできています。脳の中の報酬物質が分泌されるのです。その物質は非常に強い快感を感じさせる物質なのです。ちなみに、その物質を出しっぱなしに出来るのが麻薬です。一度味わったらやめられない！そして人間は、ひたすらその快楽を求めて努力します。これが人間が進歩する大きな要因ともなっています。いろんな発明や発見は、人間の底なしの欲を埋めるための行為でしかありません。それを美化しているのは人間だけです。決して猫は美化しません。

歳をとってくると若い頃なら達成できたであろう事も徐々に少なくなり、欲だけが取り残されます。これは不幸以外の何者でもありません。よく、お年寄りで「幸せな毎日を送っています」なんておっしゃる方がいます。若い時は「あぁ、あんな幸せなお年寄りになりたい」なんて思いましたけれど、最近は「えっ、本当にぃ〜、嘘っぽいなぁ〜」って思ってしまいます。

若い人に言いたいのですが、歳をとったからと言って欲がなくなり仏様になれる様に準備している。なんて事は全くありません。じじいになっても相変わらず、欲の塊です。人間って！

何で歳をとったというだけで聖人君子にならなきゃならないのか！そんなもんです。

欲の量は変わらないのに、達成する可能性だけ減っていく。地獄ですね。

さて、この地獄を回避する方法があります。それは「悟り」を開く事です。

無理です。私の様な凡人には悟りを開くことの方が地獄に見えます。なぜって、悟りを開くためには修行が必要なのです。何事にも動じない心を作るためには、その何事より厳しい体験を数多く経験しなければなりません。異常に激しい試練を経験すればそれ以下の試練など感じなくなる。そのためには飢餓や激痛、暑さ、寒さ、睡魔などに耐えて修行をするのです。まあ、考えただけでも無理ですね。

今の私たちは、昔に比べ、相当に豊かで楽しい環境で人生を歩んでいると思います。なのに満たされないこの心！何が原因なのでしょう？

この前ふと気がついたのです。朝顔を洗っている時、昔は冬でも冷たい水を井戸から洗面器に汲んで顔を洗っていたなぁ〜って。そのうちに水道が来て外に出なくても水道の冷たい水で顔を洗っていました。次に給湯器ができて少し待てばお湯が出る様になりました。次には水道から直接お湯が出る様になり、それほど待たなくてもお湯が出る様になり、そして今では蛇口一つで温度調節までできる様になってきました。

世の中進歩したなぁ〜ってつくづく思ったのです。まあ携帯電話を見れば一目瞭然ですが。

そして思ったのです。この進歩の原動力って何か。やっぱり欲なのです。今より前進したいと言う欲求がこの進歩を実現させたのです。一見この様な欲は世の中を進歩させるためのものなので良いものだと思えるのですが、待てよ！他の欲と何が違うのか？

隣の人より幸せになりたい、隣の人が持っているものが欲しい、美味しいものが食べたい、旅行に行きたい、お酒が飲みたい、これらの欲は度を越すと犯罪になったり、浪費になったり、健康を害したりします。しかし、全述の欲と何が違うのか。そもそも、欲に良いの悪いのの違いなんてあるのか？その基準って人間が勝手に決めているんじゃないの？と考えたのです。

常に前進を続ける人類、つまり欲はどこまで行っても消えないのです。欲が消えないと言うことは、今までのことから考えると、人間ってずぅ〜っと満たされない人生を一生送ることになるのです。

つまりどこまで行っても人類は幸せになれないと言うことです。

田舎暮らしに憧れる。私も昔憧れて、吾郎さん（北の国から）の様に北海道で生活したいなぁなんて考えていました。でも、何で田舎暮らしに憧れるのかと言うと自分の欲を満たすための努力をしなくて済みそうだからです。都会にいれば何かと人同士の葛藤が生まれそこには自然と競争の意識が芽生えます。競争に勝った時は報酬物質を得られますが、勝ってばかりもいられません。いずれ負けます。もうそんな勝ちたい欲は捨てて田舎でゆっくり過ごしたい。

しかし、田舎に行ったからといって欲から逃れられるかと言うとそんなことは無いのです。全ての外界との交渉を断ち切ったとしても、それは無理なのです。食欲、性欲、物欲からは逃れられないのです。

そう考えると、幸せになるための唯一の方法は、もうお分かりの様に全ての欲を捨てることですね。それは、つまり死ななければそこからは解放されないと言うことです。

あぁ〜無理！だって死にたくないもの（生存欲？）。