山登りの話
登山はあまり好きではありません。
初めて私が登った山は、岩手山という山です。岩手県の盛岡市から見える大変きれいな山です。標高は2000メートルを越えていて相当高いです。しかも周りにあまり高い山が無いので余計に目立ちます。その山の佇まいというか形が素晴らしく、見れば見るほど素晴らしいと思える山です。
友達たちに誘われて初めて登山を経験したのですが、完全に舐めてましたね。思いっきりやられました。岩手山の見た目は、すごくなだらかで優しそうな山なのですが、実際、登ると相当キツイ山です。その頃は柔道に夢中で体力に自信がありました。一緒に行った友達は特に運動はしておらず、「大丈夫?」なんて心配していたぐらいでしたが、柔道の体力と登山の体力は全く違っていましたね。柔道は瞬発的な力が必要なのですが登山は持久力です。私には全くと言っていいほど、この持久力がありませんでした。今まで気がつかなかったのです。
上りもきつかったのですが、問題は下りでした。足が逝ってしまったというか、全く膝を曲げることが出来なくなってしまったのです。よく足が棒になるなんて言いますが、この言葉の意味がよくわかりました。まさしく棒の様になりましたね。曲げると膝が折れてしまって立っていられないのです。そして一歩足を踏み出すごとに酷い痛みが襲います。棒状の足と痛みで、平地でもうまく歩けないのに、急な坂道、そして大きな石がゴロゴロある登山道を降りなければなりません。泣きましたね。
その距離の長いこと長いこと。歩けど歩けど麓に辿り着きません。今までの人生でこんなキツかったことはありませんでした。あまりにも到着が遅かったので、先に麓に降りた友人たちが心配して迎えにきてくれました。みんなの力を借りてやっとの思いで麓に着いた途端、起立性低血圧を起こして倒れてしまいました。この時から登山が死ぬほど嫌いになったのです。
しかし、その後すっかり登山にハマった友人たちに無理やり山に連れていかれ、ほどんどの国内のメジャーな山を制覇してしまいました。なんという辛い人生でしょう。しかも、途中からは路線が変わって沢登へ行く様になり、命がけの週末を過ごすことになったのです。
みんな、なぜ私を連れて行きたがるのかというと、山登りでは自分よりヘタっている奴を見ると不思議と元気が湧くのです。つまり、私はみんなのリポビタンDの役割を果たしていたのでした。途中から私たちと山へ登ることになったメンバーは私より体力がなく、早くヘタってしまいます。そのメンバーがきた時だけ、なぜか私は元気になるのでした。私のリポビタンD なのです。今は全然山に行くこともなく平和な日々を過ごしていますが、時々あの頃が懐かしくなります。また山に登ろうかなぁ〜なんてことは、全然思わない今日この頃です。